日本の温泉地の中でも珍しいのが、泉質を「色」で呼び分ける場所。
群馬の伊香保は「黄金の湯」「白銀の湯」、兵庫の有馬は「金泉」「銀泉」。
距離は離れていても、どちらも“二色の湯”を持つという不思議な共通点を備えています。
ただし、実際の泉質も歴史も、それぞれに大きな違いがあります。
この記事では泉質・歴史・グルメを切り口に、伊香保と有馬をゆるやかに比較してみます。


伊香保温泉:黄金と白銀の二面性
泉質
- 黄金の湯
鉄分を多く含む塩化物泉。空気に触れると酸化して赤褐色になり、湯の縁に析出物がこびりつくほど濃厚。保温効果が高く、冷え性や疲労回復に効く。 - 白銀の湯
無色透明の硫酸塩泉。肌あたりが柔らかくさっぱりしていて、美肌や長湯に向く。
→ “体を芯から温める湯”と“軽やかに整える湯”の対照が楽しめる。
歴史的背景
伊香保は古くから「子宝の湯」「婦人の湯」と呼ばれ、万葉集にも歌われるほど歴史ある温泉。戦国時代には武将たちも利用し、江戸時代には湯治場として栄えた。石段街を中心に発展した温泉街の姿は今も健在。
観光とグルメ
- 観光:秋には河鹿橋の紅葉が名所。石段街の温泉情緒とあわせて絵になる風景。
- グルメ:
1. 水沢うどん(コシの強い手打ち麺)
2. 舞茸の天ぷら(うどんと最高の組み合わせ)
3. 湯乃花饅頭(伊香保を代表するお土産)
有馬温泉:天下の名湯と豪奢な泉質
泉質
- 金泉
鉄分と塩分を多量に含む強塩泉。湯船は濃い赤褐色で、重厚感がある。保温・殺菌効果が高く、湯冷めしにくいのが特徴。 - 銀泉
二酸化炭素泉やラジウム泉。無色透明だが血行促進や新陳代謝に優れ、飲泉としても用いられる。美容・健康目的にも人気。
→ “重厚な薬効泉”と“爽快な療養泉”という二つの顔を持つ。
歴史的背景
日本書紀や古事記に登場するほど古い歴史を持ち、豊臣秀吉もこよなく愛した温泉。江戸時代には「天下の名湯」として庶民にまで知られ、明治以降は外国人客も訪れる国際的な温泉地へ。現在も国内外から多くの観光客が訪れる。
観光とグルメ
- 観光:レトロな温泉街の散策と、足を伸ばして神戸港や北野異人館へ。
- グルメ:
1. 神戸牛(ステーキやしゃぶしゃぶで豪勢に)
2. 神戸洋食(ビーフカツレツやオムライス)
3. 炭酸せんべい(有馬といえばのお土産)
共通点と対比
- 共通点
どちらも「二種類の湯」を色で呼び分け、濃厚な湯と透明な湯のコントラストを楽しめる。 - 対比
伊香保は「素朴で親しみやすい湯治場の伝統」。
有馬は「天下人や国際的客が愛した格式高い湯」。
グルメも伊香保は“素朴な郷土食”、有馬は“豪華な都市グルメ”という対照が鮮やか。
比較表:伊香保と有馬の魅力を整理
項目 | 伊香保温泉 | 有馬温泉 |
---|---|---|
泉質 | 黄金の湯:鉄分豊富な塩化物泉(赤褐色・保温効果) 白銀の湯:透明な硫酸塩泉(さっぱり・美肌) | 金泉:鉄・塩分を含む強塩泉(濃厚な赤褐色・薬効高い) 銀泉:二酸化炭素泉・ラジウム泉(透明・血行促進) |
歴史的背景 | 万葉集にも詠まれる古湯。湯治場として武将や庶民に親しまれ、石段街を中心に発展。 | 日本書紀に登場する伝説の名湯。豊臣秀吉が愛し、江戸期以降は「天下の名湯」として格式を誇る。 |
観光 | 石段街、紅葉の河鹿橋、榛名湖 | 温泉街散策、神戸港、北野異人館 |
グルメ | ① 水沢うどん ② 舞茸天ぷら ③ 湯乃花饅頭 | ① 神戸牛 ② 神戸洋食 ③ 炭酸せんべい |
まとめ
伊香保は「石段街と紅葉、郷土料理の素朴さ」が魅力。
有馬は「天下の名湯と神戸グルメの華やかさ」が魅力。
黄金と白銀、金泉と銀泉――。
二色の湯をめぐる旅は、泉質の違いだけでなく、その土地の歴史や食文化の違いまで感じられるもの。
勝敗ではなく“気分や目的に合わせて選ぶ”のが、この二大温泉を楽しむコツです。
インスタグラムにも旅行の写真を掲載してみます。ご覧いただけたら嬉しいです。
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